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東京地方裁判所 昭和25年(ヨ)4108号 決定

申請人 今田斉 外一名

被申請人 太洋鉄板株式会社

一、保証 無保証

二、主  文

被申請人が昭和二十五年十月五日附で申請人等に対してなした解雇の意思表示の効力を停止する。

被申請人は申請人等を被申請人会社の從業員として取扱いその就業を妨げてはならない。

三、理  由

第一、申立の趣旨

申請人は主文と同旨の決定を求め、

被申請人は「申請人等の本件仮処分申請はいずれも却下する」との決定を求めた。

第二、爭のない事実

申請人今田斉及びその長男同一成両名は、いずれも昭和二十三年十月頃以來被申請人会社(以下会社という)に雇われ、斉は同会社の洗滌部副主任として一成は鍍金部の工員として夫々勤務していたのであるが、会社は昭和二十五年十月五日申請人両名に対し同日附で右両名を解雇する旨の意思表示をなした。

第三、申請人の主張

申請人一成は昭和二十三年十二月二日就労中自己の過失によらずして両下肢に熱湯をうけて重傷を負い、約二ケ月間入院治療をうけその後更に療養につとめたがなお身体障害を存し從前通り働くことができなくなつた。しかるに会社は労働基準法第七十七條所定の障害補償金を支拂わなかつたので申請人等は昭和二十五年七月頃亀戸労働基準監督署に対して右の事情を申告した結果、同署は同年九月二十九日に補償決定をなした。ところが、申請人等はその直後である前示同年十月五日突如として会社より解雇の意思表示をうけたが、これは同人等が、労働基準監督署え右申告したことを理由とする解雇であると断ぜざるを得ないから労働基準法第百四條第二項の規定に違反し無効なものである。

第四、被申請人の主張

一、会社が申請人等を解雇したのは、同人等に同社就業規則第二十六條十号にいわゆる「職務上の指示命令に不当に反抗し職場秩序を紊し又は紊そうとしたとき」に該当する所爲があつたから同條に基き解雇したものである。

二、なお申請人等は昭和二十五年十月五日いずれも会社から解雇予告手当を受領しているから、本件解雇を承認したものである。

第五、当裁判所の判断の要旨

一、申請人一成が昭和二十三年十二月に就業中熱傷を負い、その結果身体障害を存しその後以前のように働くことができなくなつたこと、被申請人会社がその後労働基準法所定の災害補償金を支拂つていないこと、申請人らが、亀戸労働基準監督署へその旨を申告した結果同署が補償決定をしたことはいずれも疏明されている。

二、よつて本件解雇の効力について考えてみる。

(一)  まず、会社の主張する申請人等に対する解雇事由をみるに、申請人斉が洗滌部副主任として鉄板の洗滌順位を適宜変更して操作したこと、申請人一成が本年に入つてから時折欠勤、早退したこと、職場の同僚と口論したことのあつたことなどは一應認められるが、右操作順位の変更は、材料の節約その他の必要から、通常この種の作業においては行われていることであり、また前記欠勤、早退等については責むべき点が皆無とはいえないが、これらをとりあげて直ちに前記就業規則に該当するものとはいゝ難いし、他に両人が特に職場の同僚から嫌惡され、又は作業能率を低下させ、その結果会社に損害を與えたような事情については疏明がない。

(二)  しかるに本件解雇が亀戸労働基準監督署の災害補償決定がなされた直後に行われたこと、及び会社代表者取締役及川武三が亀戸労働基準監督署から災害補償決定書の送附をうけて間もなく会社從業員の代表者及び申請人両名に対して、会社の機密を外部へ洩すような者を雇傭しておくわけにはいかないという趣旨の発言をしたことなどが疏明されており、これらの事実と前記(一)において一應認めることのできた事実を綜合すれば被申請人会社の本件解雇の決定的な理由は申請人らが、労働基準法に違反する事実を労働基準監督署に申告したことにあると判断せざるをえない。また申請人が予告手当を受領したことは認められるが、これによつて同人等が会社側の解雇の意思表示を承認して、以後このことについて爭はないことを約したものとは認めがたい。

よつて本件解雇は労働基準法第百四條第二項の規定に違反するものであり、同規定は効力規定と解すべきであるから、これらの解雇の意思表示は無効なものというべきである。

解雇が無効であるにかかわらず被解雇者として取扱われることは労働者たる申請人等にとつて著しい損害であるから申請人の從業員たる地位を保全する必要ありと認め主文の通り決定する。

(裁判官 西迪雄)

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